スタッフが次々辞める零細税理士事務所のリアル―崩壊編

採用人事

今回は、実際にうちの事務所で起きた大量退職から体制復帰までの経緯を、赤裸々に書いていきます。零細事務所ならではの苦難だと思いますので、同じような状況にいる方はぜひ参考にしてください。

## ■そもそもは結構安定していた

もともとは業務量に対してスタッフ2名分くらい余裕を持った人員体制で、退職者も数年に1回程度でした。ただ傾向として経験者採用はほぼできず、補充人員は基本的に全員未経験の新人です。税理士志望の新人もなかなか集まらないので、税理士事務所勤務の経験がない方や、これから勉強を始める方の中から発掘するような採用でした。はじめは総務担当として入社し、今ではしっかり税務スタッフとして活躍しているメンバーもいます。未経験者を採用して育てながら業務を回す、というスタイルで、実際結構安定していました。

## ■最初の2名退職―振り返れば、ここが分岐点だった

10年目スタッフと3年目スタッフが、それぞれご家族の介護を理由に退職。こういう事情はどうしても出てきてしまうので仕方ありません。うち一人は完全リモート勤務の税理士事務所に転職するとのことでした。余談ですが、完全リモートで品質を落とさず税務をこなすのは結構難しいと思っています。PC・Webツールの操作技術、コミュニケーション能力、スケジュール管理能力が必要な上、税理士の指揮監督など税理士法の要件もクリアしなければならない。しかもそれが一人だけでなく、スタッフ全員が高いレベルで揃わないと実現しません。とはいえライフステージが多様化する時代なので、働き方もそれに対応していく必要があるとは感じています。全く見知らぬ人をイチから採用するより、既存の優秀なスタッフにリモートワークや時短勤務をしてもらって退職を防ぐほうが合理的かもしれません。もちろん本人の希望あってのことですが。

募集は広告掲載とエージェントを併用しました。エージェントに最近の採用市場や求職者の志向を聞くと、返ってくるのは決まって「サポート体制と評価体制、リモートワーク可、キレイなオフィス、高年収がないと人は採れません」という話ばかり。エージェント自身がその流れを助長している面もあるでしょう。応募者からすれば嬉しい話でしょうし、エージェントも高年収で決まれば売上が上がるので都合がいい。ただ経営視点で言えば、その報酬を払うのは事業者側なので、もう少し事業者側にも寄り添った提案をしてほしいというのが本音です。

この時点ではまだ人数に余裕があったので、「良い経験者が来たら考えよう」というのんびりした対応をしていました。これが後から振り返ると分岐点でした。

## ■3人目の退職で焦って3名採用するも、二重の誤算

3人目の退職理由は、職務内容と報酬のミスマッチだったと思います。総務スタッフからスタートし、3年目になって徐々に税務スタッフの補助業務へ活躍の場を広げていたところでしたが、税務という専門性の高さゆえに、税理士を目指さないスタッフから見るとスキルアップが難しく、給与アップも見込みにくい。本人が目指す方向と現実にギャップが生まれたのだと思います。

10月頃、採用活動に本腰を入れて正社員2名を採用しました。退職者と同レベルの3年程度の経験者が理想でしたが、エージェントからは「その層は人気があるので」と紹介すらしてもらえず、結局、翌年4月入社予定の新卒学生と、既存のバックオフィススタッフを税務スタッフへ昇格させる形での採用になりました。

ところがこれが波乱の幕開けでした。今名前が出た2人は、今ではもう2人とも事務所にいません(泣)。

まず11月頃、新卒入社予定だったスタッフから「大学院に進学し、そのままアルバイト先の司法書士事務所に就職したい」と内定辞退の連絡が来ました。若さゆえとはいえかなり非常識だなと思いましたが、どうすることもできず受け入れるしかありません。この一件以降、内定受諾書は必ずもらうようにしています(法的拘束力はありませんが)。

さらに12月、年末調整業務で繁忙期に入った矢先、今度は12月入社の新人スタッフが「周りが残業しすぎて体調を崩した」と退職届を出してきました。うちの事務所は処理件数がそれほど多くなく、スケジュール管理もうまく回っているほうで、若手中心に半分くらいは定時退勤している状況です。それでもそう感じるなら、正直この業界には向いていないので、無理に引き止めても仕方ないと判断しました。

採用したばかりのスタッフが立て続けに辞めていくという前代未聞の事態でしたが、これはまだ序章に過ぎませんでした。

## ■そこから始まった退職の連鎖

繁忙期中に人数が減ったことで、既存スタッフへの負担が一気に増えました。こうなるともう歯止めが効きません。4月に一人、5月に一人、6月にもう一人と、立て続けに退職の申し出が続きました。

4月の退職者は、報酬や組織体制への要望が大企業水準で、うちのような零細事務所とは考え方の前提が違っていました。5月の退職者は税理士資格を取得したばかりでしたが、登録に必要な実務経験期間だけ勤めるつもりだったようです。こういう本音は面接では見抜けません。6月の退職者は「業務過多でサポート体制が薄い」という理由でしたが、本人は繁忙期でも常に定時退社しており、2年間先輩から手厚くフォローを受けていた立場です。本当にその理由だけなのだとしたら、次の職場でむしろ苦労するのではと心配になります。

もちろんそれぞれの選択なので応援はしていますが、最近はSNSなどで見える情報だけが先行しすぎていること、そして転職エージェントが高年収転職を煽りすぎていることには危機感を持っています。転職では「やってもらえる環境」だけでなく「自分が力を発揮できる環境」を見る視野の広さが必要です。大事なのは結局「やるのは自分」ということ。税理士という責任ある立場を目指すなら、なおさらそこは見誤らないでほしいと思います。

## ■そこに産休育休も重なり、最悪期へ

さらにこのタイミングで、5年以上苦楽を共にしてきた優秀なアシスタントが産休育休に入りました。これ自体は退職ではなく、負担うんぬんより素直に嬉しい出来事です。本人が望むなら、時短勤務でもリモート勤務でもぜひ呼び戻したいと思っています。ただ結果として、体制が最も薄くなるタイミングと重なってしまったのは事実です。

## ■締め:「余裕があるうちに動かなかった」ことへの反省

何もしていなかったわけではなく、実際に採用自体はできていました。ですので、これは単純に良い縁に恵まれなかった、という面もあると思います。ただ、「今までのやり方を変えずに採用を続けるのはリスクが高い」と判断し、ここから採用活動そのものを見直すことになります。

次回は、採用活動の転換と、そこからリカバリーまでの経緯を書いていきます。お楽しみに。以上、餅でしたー。

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